研究テーマ

対人関係心理学研究室では、コミュニケーションと対人関係の心理学を研究テーマにしています。

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コミュニケーションと対人関係の心理学

私たちの”こころ”は目に見えず、かたちもありません。日常生活において、私たちはそのような目に見えず、かたちもない自らの“こころ”を伝え、周囲の人たちの“こころ”を理解するために、ことばはもちろん、表情や視線、身振りなどさまざまな手がかりを用いています。この現象は、対人コミュニケーションと呼ばれています。そのコミュニケーションを繰り返すうち、対人関係が形成・維持・展開していきます。現代社会の変化の中で、人と人の関わりの難しさがあらためて注目されています。しかし、人と人とが“うまく”関わることは、社会的動物である人間にとって究極のテーマと言っても過言ではないでしょう。本研究室では、“こころ”を伝え、理解し、ときに通じ合う「対人コミュニケーション」と、その対人コミュニケーションを繰り返すことで形成・維持・展開していく「対人関係」という現象について心理学の観点から科学的にアプローチしています。

対人関係の展開と対人コミュニケーション

対人関係が展開するにつれてコミュニケーションは変化していきます。例えば、初めて出会ったころはあまり目を合わさず、表情もかたく、相手との距離も遠くで、話が弾まず沈黙が続いたりします。ところが、付き合いが長くなり、親しい間柄になっていくにつれて、お互いに相手をよく見て、笑ったり怒ったり泣いたりといろいろな表情が出せるようになり、相手との距離も近くなり、ときどき相手に触れたり、話が弾んで盛り上がったりするようになります。そこから、さらに付き合いが続き、何十年もの付き合いにもなると、お互いの情報が蓄積されて、相手のほんの少しのしぐさやたった一言だけで”こころ”が通じることが起こりえます。もちろん、すべての対人関係がずっと続いていくとは限らず、ケンカしてしまったり、自然に疎遠になってコミュニケーションをしなくなり、終わりをむかえることもあります。私たちは日々、出会いと別れを繰り返しながら、たくさんの対人関係を同時並行的に展開しています。このように、「対人関係の展開」、すなわち、関係の進展段階によって対人コミュニケーションの様相は異なります。

関係に対する展望が対人コミュニケーションに及ぼす影響

同じ関係の進展段階でも、相手との関係が今後も続いていくと思うかどうか、つまり、「対人関係に対する展望」の持ち方によってコミュニケーションが変わることが研究から示されています。例えば、同じ初対面でも、その場限りの一時的な関係と思うか、これからも関係が続いていく継続的な関係と思うかによって、対人コミュニケーションの取り組み方が変わります。この関係に対する展望は、さらに内発的動機づけと外発的動機づけの観点から区別されます。その相手との関係を自分自身が今後も続けていきたいと思うのか(内発的動機づけに基づく関係に対する展望)、あるいは、何らかの外部からの強制力によって相手との関係を続けていかなければならないのか(外発的動機づけに基づく関係に対する展望)によって、対人コミュニケーションへの影響は違います。

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集団のコミュニケーション

家のリビングで家族と話すとき、学校の教室でクラスメートと話すとき、職場の会議室で仲間と話し合うとき、日常生活のなかで私たちは「集団のコミュニケーション」をしばしば行っています。対人コミュニケーションに参加する人数が多くなると、1対1の場合とは異なる問題が生じてくることがあります。

まず、注意配分の問題があります。これは、参加人数が多いほど、一人ひとりの相手に注意を向けられなくなってしまう問題です。1対1の場合なら、自分の注意を100%相手に向けて、目の前の一人の相手に集中して話すことが出来ます。ところが、自分を含めて3人で話す場合なら一人ひとりに向ける注意は50%になってしまいます。自分を含めて6人で話す場合、一人ひとりに向ける注意は単純に分配するなら20%になります。コミュニケーションに参加する人数が増えるほど、一人ひとりに集中することが難しくなるため、ときに私たちは注意配分の優先順位をつけて、誰かに集中する代わりに他の誰かに注意を払わなくなることもあります。

次に、多様性の問題も生じます。この問題は、参加人数が多いほど、一人ひとりの関心や知識にバラつきが出て話の焦点を定めることができなくなるものです。1対1の場合なら、相手の関心や知識に合わせて話すことが出来ます。もちろん最低限、目の前の相手の関心や知識に合わせるための引き出しが自分に必要なことは前提としてあります。しかし、たくさんの人数が集まると、十人十色といわれるように、人によって関心も知識もさまざまで、誰かが関心のある話題を話すと、別の誰かは興味を持てなくなるような問題が起こりえます。また、ある話題について知識の豊富な人に向けて詳しい話をすると、まだ知識のあまりない人にはわからなくなってしまいます。

そして、相互作用の問題もあります。コミュニケーションに参加する人数が多いほど、発言する順序や一度に発言する量を調整しにくくなるという問題です。1対1の場合なら、発言する順序は明白です。相手が話した後に自分が話して、自分が話したら今度は相手が話します。1対1では発言の順序は自動的に決まります。ところが、参加人数が多くなると、まず誰が話すのか、そして、誰かが話した後で次に誰が話すのかが自動的に決まりません。加えて、一度にどのくらい話すかの判断も難しくなります。一人がたくさん話すと、その分、他の人の話す時間がなくなります。人数が多くなるほど、その調整が難しくなるわけです。

こういった集団のコミュニケーションの特徴を反映して、集団サイズが大きくなるとメンバー間の双方的なコミュニケーションから、特定のメンバーから他のメンバーに向けた一方向的なコミュニケーションになりやすいことが研究結果で報告されています。

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対人コミュニケーションの行為者と観察者

 

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