西宮市消防局のご協力をいただき、映像通報システムを用いた119番通報の実験を2022年6月~11月にかけて実施しました。
従来の119番通報は、電話の先が見えず、音声のみを手がかりにしていました。映像通報システムは、現場の傷病者や災害状況をリアルタイムで通信指令室と共有することができ、現在全国各地で119番通報に導入されつつあります。
今回、対人関係心理学研究室の上村さんとともに、この映像通報システムを用いた119番通報の効果を検証するため、模擬通報状況を設定して実験を行いました。大学内の実験室から模擬通報を行い、西宮市消防局 警防部指令課の通信指令センターで通信指令員が実際に受信し、対応いただきました。本研究の実施に際して、西岡明人氏を中心に西宮市消防局の全面的なご協力をいただきました。また、模擬通報者役の実験参加者として、学生や社会人、多くの皆様にご協力いただきました。
昨年6月下旬から実験を開始し、新型コロナウイルス感染拡大下では消防業務を優先するため、一時中断を経て、10月から再開し、11月末に全ての実験を完了することができました。実験の準備から実施に至るまで、ご協力いただいた学内外の多くの皆様にあらためて御礼申し上げます。
ご協力いただいた通信指令員の皆様からは、「今回の実験で映像通報システムの使用に磨きがかかった」「今後さらに映像通報システムを活用していく上での課題点を知ることができた」などのご意見をいただいています。また、実験に参加いただいた皆様からは、「模擬通報だとわかっていても緊張や焦りでうまく話せなかった」「実際の通報ではなおさら難しいと思う」「いざという時のために、119番通報や消防のことをもっと知り、備えておく必要があると思う」「とても良い経験になった」「映像通報システムを初めて知った」「うまく言葉にできないことも映像通報システムを通して伝達可能で、とても便利だと思った」「これまでスマートフォンを使いこなせていなかったが、映像通報システムを活用するため、操作に慣れるようにしたい」「電話の対応をしてくれた方(通信指令員)がとても冷静に、丁寧に対応してくださったので助かりました」など感想をいただきました。
実験結果について、2023年1月に西宮市消防局で報告をさせていただきました。今後、全国の消防・救急医療関係者が参加する通信指令シンポジウムで本研究結果を発表する予定です。このシンポジウムは対面とオンラインでハイブリッド開催されますが、今回の研究発表は2月4日(土)~6月末まで参加者にオンデマンド配信される予定です。
今回の研究結果が円滑な119番通報や映像通報システムの活用のために何か少しでも役に立つことを願っています。そのために、現時点の結果をシンポジウムで共有しつつ、さらにデータの解析や考察を進めていきたいと考えています。