論文採択決定・事前知識が119番通報に及ぼす影響

「社会安全学研究」誌に論文採択が決定しました。119番通報要領の知識を有することが、119番通報の迅速性と正確性に及ぼす影響を、模擬通報場面を設定して実験的に検証した研究になります。梅花女子大学の塩谷尚正先生、京都橘大学(現・NPO法人 病院前救護と健康管理研究会)の北小屋 裕先生、大阪大学産業科学研究所の駒谷和範先生との共著論文になります。

塩谷尚正・木村昌紀・北小屋裕・駒谷和範 (印刷中). 119番通報要領の事前知識が迅速性と正確性におよぼす影響―模擬通報場面による実験的検討― 社会安全学研究.

【和文要約】

119番通報は迅速かつ正確な情報共有が求められるコミュニケーションである。そのコミュニケーションは通信指令員が主導し,通報者にとってほとんど経験がなく、時間的切迫感があり,感情的動揺が喚起されやすいといった特徴がある。迅速で正確な緊急通報を実現するために通報者の事前知識が有効になると考えられ,その心理学的検証が求められる。本研究は119番通報の要領の事前知識がコミュニケーションの迅速性や正確性におよぼす影響を実験室実験によって検証した。実験参加者は通報要領の知識を事前に得る実験群と統制群とに振り分けられ,けが人が発生する場面の動画を視聴し,現役の通信指令員が対応する模擬的な119番通報を行った。その結果,統制群よりも実験群において有意に通話時間が短くなった。一方で正確な情報の伝達得点では群間の差はなかった。さらに発話行動の分析では,ターン(話者交代)数や実験参加者の発話の文字数と自己反復数が統制群よりも実験群において少なかった。そのうえ,実験協力者の発話の文字数と自己反復数が統制群よりも実験群において少ない傾向となった。これらの結果から,通報者の事前知識が円滑なコミュニケーションを促進し,必要な情報を迅速に伝達できるようになると考えられる。最後に、事前知識が緊急通報におよぼす効果の重要性について議論された。