論文公刊「なぜ緊急時の援助要請を控えるのか」

ヒューマンサイエンス誌に「なぜ緊急時の援助要請を控えるのかー119番通報抑制の実態とその規定因の検討ー」が掲載されました。近年、119番通報が増加傾向にありますが、抑制された通報の実態はよくわかっていません。本研究では、119番通報抑制の実態とその心理的な規定因をオンライン調査によって検討しました。

木村昌紀・塩谷尚正・北小屋裕 (2025). なぜ緊急時の援助要請を控えるのか―119番通報抑制の実態と規定因の検討― ヒューマンサイエンス, 28, 1-9.

【要約】本研究の目的は、119番通報抑制の実態とその規定因を心理学的に検討することである。全国の20代から60代の男女1176名を対象にオンライン調査を実施した。回答者全体の約15%が通報抑制を経験しており、抑制された通報のうち約30%が結果的に必要だった。男性より女性の方が、年長者より若者の方が通報をためらいやすく、相互協調性が通報を抑制する一方、相互独立性が通報を促進していた。援助要請回避型の特徴をもつ人たちほど119番通報も控えやすかった。119番通報の適正利用を求める公的な周知は、必要な緊急通報も抑制してしまう危険性があった。そのため、周知方法には十分な注意を払うべきである。