富士通研究所からの受託研究

本年度も昨年度に引き続いて、2016年10月1日~2017年3月31日にかけて「対人コミュニケーションにおけるメディアの役割の検証」という研究テーマで、株式会社 富士通研究所 メディア処理研究所からの受託研究を行います。2年目の受託研究なので、より明確な成果を意識して研究に励みます。

日本グループ・ダイナミックス学会第63回大会での発表

2016年10月9日、九州大学で開催された日本グループ・ダイナミックス学会第63回大会で研究発表を行いました。京都橘大学の塩谷尚正先生との共同研究で、119番通報の経験や知識、通報時の感情状態や通報への抵抗感、通信司令員とのコミュニケーション評価などの基本的な情報とそれらの関連性について、インターネット調査を用いて、20代~60代の各世代・男女別に100名ずつの合計約1000名を対象にして調べた研究です。

木村昌紀・塩谷尚正 (2016).  緊急救命通信における通報者の心理に関する探索的検討  日本グループ・ダイナミックス学会第63回大会発表論文集, p.131-132.  於: 九州大学  (10/9/2016).

論文掲載決定「感情心理学研究」

学術雑誌「感情心理学研究」に論文が掲載されることが決まりました。神戸学院大学の山本恭子先生との共同研究で、顔文字や表情絵文字の返報性の影響を調べた研究です。

木村昌紀・山本恭子  (印刷中).  メール・コミュニケーションにおける顔文字や表情絵文字の交換過程が対人感情に及ぼす影響   感情心理学研究.

【要約】 本研究の目的は,メール・コミュニケーションにおける顔文字や表情絵文字の交換過程が対人感情に及ぼす影響を検討することである。場面想定法を用いて,顔文字や表情絵文字の返報性により対人感情が異なるかを調査した。各研究で用いた場面は,通常のメール交換である遊びの待ち合わせ場面(研究1),自らの非を謝罪し友人から受容される場面(研究2),自らの提案を友人から拒否される場面(研究3)であった。研究1および2では,送信メールに顔文字があるのに受信メールにない場合,ポジティブ感情が喚起されにくく, ネガティブ感情が喚起していた。これらの結果は,返報性の規範に反する顔文字の欠如によるものと考えられた。一方で,研究3では返報性の規範の影響がみられず, 受信メールに表情絵文字がある方がないよりも,ポジティブ感情が喚起され,ネガティブ感情が喚起されなかった。これらの結果から,顔文字や表情絵文字の返報性の規範は,対等状況や受容状況のような協調的なメール交換過程において重要であるのに対して, 拒否状況のような非協調的なメール交換過程では重視されないことが示唆された。

本論文の研究2は渡辺麻友さんの神戸女学院大学2012年度卒業論文に, 研究3は神戸 萌さんの神戸学院大学2009年度卒業論文に基づいたもので, それぞれ本人の許可を得て再分析・再考察を行いました。これらの計画段階において, 研究2は神戸女学院大学の森永康子先生(現所属: 広島大学)から, 研究3は神戸学院大学の三浦麻子先生(現所属: 関西学院大学)からそれぞれご指導を賜りました。その後, 第一著者の指導の下で研究2・3を実施した研究になっています。論文審査過程でも査読者の先生から多くの有益なコメントをいただきました。ここで皆様に感謝申し上げます。