第456回KSPでの発表

2018年6月23日(土)、神戸女学院大学にて第456回KSP(関西社会心理学研究会)を開催しました。

【日時】
2018年6月23日(土)14:00-17:00

【場所】
神戸女学院大学 理学館1階 S19教室
(〒662-8505 兵庫県西宮市岡田山4-1)

【題目】
緊急通信の心理学 -通報者と通信指令員による119番通報のコミュニケーション-

【発表者】
木村昌紀 (神戸女学院大学 人間科学部 心理・行動科学科)
塩谷尚正 (関西国際大学  人間科学部 人間心理学科)
匂坂 量  (国士舘大学大学院 救急システム研究科)

【共同研究者】
北小屋 裕(京都橘大学 健康科学部 救急救命学科)

【概要】
119番は、火災や救急・救助等の対応を要請するため、市民が消防機関に通報する際の緊急用電話番号である。119番通報では、消防機関の通信指令員が通報者から火災や救急の場所・状況を聴取し、消防車や救急車を出動させる。また、通信指令員は傷病者の状態に即して応急措置を通報者に指導することもある。これらの通話は、消火や救助活動、緊急医療の初期対応に位置し、迅速かつ適切に対応できるかどうかが被害規模や人命を左右するため、極めて重要なコミュニケーション状況である。しかし、時間的に切迫する中、感情的に動揺する、通報経験に乏しい一般市民の通報者と、専門家の通信指令員が、音声のみを手がかりにしてコミュニケーションを行うことは非常に困難でもある。
今回の研究会では、まず、発表者の木村が、119番通報のコミュニケーションを心理学の枠組みから整理した後、通報者に関する調査結果を報告する。これは、通報経験や通報理由、感情状態、通報の知識が、通信指令員とのコミュニケーションに及ぼす影響を調べたものである。次に、発表者の塩谷氏が、通信指令員を対象にした調査結果を発表し、指令員教育の取組みを報告する。これまで長い間、通信指令員には標準的な教育手法がなく、指令業務の遂行が経験則や個人特性に依存していた部分がある。そこで、全国の消防組織から協力を得て通信指令員を対象に業務遂行に関する質問紙調査を実施した。今回はその結果と、通信指令員のためのモデル専科教育の取り組みについて報告する。最後に、発表者の匂坂氏から、消防機関の協力のもと実施した、通報状況・内容の分析結果をお話する。この研究では、119番通報の中でも特に迅速かつ適切な対応が必要な、心停止に関する通報に注目した。心停止の通報では、通信指令員が通報者に心肺蘇生法を指導する際に、まず心停止を認識しなければならない。そこで、通報状況・内容の分析から、通信指令員による正確な心停止判断を阻害する要因を検討した。これらの木村・塩谷氏・匂坂氏の発表時、消防組織や119番通報に関する専門家として、共同研究者の北小屋氏から随時情報提供をしてもらう。