【概要】 2026年1月30日、神奈川県消防学校において県内の通信指令員を対象とした専門研修が行われ、119番通報対応における心理学の活用をテーマとした講義が実施されました。救急需要の増加やICT化が進む中、通報者の心理理解に基づくコミュニケーションの重要性が高まっており、映像通報システム「Live119」や救急相談センター(#7119)に関する研究成果を踏まえ、心理学の知見を消防・救急現場の実務へ応用する取り組みが紹介されました。

【詳細】 2026年1月30日(金)、神奈川県消防学校のご依頼を受け、県内の通信指令員を対象とした専門研修において講師を務めました。
消防の通信指令員は、急病やけが、災害などの緊急時に119番通報を受信し、通報内容の聴取や状況判断、応急手当の助言、さらには消防隊・救急隊の出動指令を行うなど、人命救助の起点となる重要な役割を担っています。救急需要の増加や通報内容の多様化が進む近年では、限られた情報から状況を迅速かつ的確に把握する判断力に加え、不安や混乱の中にある通報者の心理状態を理解しながら対応する高度なコミュニケーション能力の重要性が一層高まっています。
神奈川県では、音声による119番通報が困難な方でも円滑に消防へ通報できる「Net119」が県内全域で導入されているほか、急な病気やけがの際に救急車の要請や医療機関受診の判断に迷った場合に電話で助言を受けることができる「救急相談センター(#7119)」が整備されています。さらに、県内複数の通信指令室では、通報者と映像を共有しながら状況確認や応急手当の助言を行うことが可能な「Live119(映像通報システム)」が導入されており、ICTを活用した新たな消防通信指令体制の構築が進められています。
神奈川県消防学校では2022年から通信指令員を対象とした特別教育が実施されており、今回で第5期を迎えました。本年度は県内15消防本部・消防局から21名の通信指令員が参加し、通信指令員としての専門的判断力や対応能力の向上を目的として、事例研究、システムダウン対応訓練、シミュレーションなど実践的なプログラムが体系的に実施されました。
本研修では、「通信指令業務教育における心理学の導入」をテーマに、コミュニケーション心理学および緊急時における心理的反応、119番通報場面における通報者行動の特徴について講義を行いました。また、最新の映像通報システム「Live119」を用いた模擬通報実験の知見を紹介するとともに、#7119に関する調査研究の成果を踏まえ、心理学的知見を通信指令業務へどのように応用できるかについて検討しました。
講義後の意見交換では、参加された通信指令員の皆様から現場経験に基づく具体的な課題や工夫が共有され、心理学的視点を取り入れた通信指令教育の可能性について活発な議論が行われました。
今回の取り組みは、心理学研究の知見を消防・救急現場の実務へ還元し、ICTの導入が進む緊急時コミュニケーションの質の向上を目指す社会連携の実践の一例です。今後も、119番通報および救急相談を含む緊急時コミュニケーションの研究と実務の架橋を通じて、市民の安全・安心の向上に寄与することが期待されます。