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コミュニケーションと対人関係の心理学を研究しています。

「コミュニケーションの社会心理学」刊行

「コミュニケーションの社会心理学」(岡本真一郎先生・編)がナカニシヤ出版から刊行されました。言語・非言語・メディアのコミュニケーションの基本的性質から、対人認知、説得、攻撃やネガティブ・フィードバック、噂、消費者行動、文化、SNSに至る現代社会における幅広いトピックをカバーしています。木村は非言語コミュニケーションのパートを担当しました。かつて盛んに研究され、学際性やテクノロジーの発展で今また注目が高まっている非言語について、非言語ならではの特徴や言語と組み合わさった働きなどを含め、紹介しています。多くの方に手に取ってお読みいただけたらと思います。

木村昌紀 (2023). 非言語が伝えること 岡本真一郎(編著) コミュニケーションの社会心理学―伝える・関わる・動かす― ナカニシヤ出版. pp.29-45.

新メンバーの研究室配属

2023年度から新たなメンバーが本研究室に加わりました。これから一緒に楽しく研究を頑張れたらと思います。よろしくお願いします。

 阿蘓 遥香 (ASO Haruka)

 市川 優月 (ICHIKAWA Yuzuki)

 烏谷 亜莉沙 (KARASUDANI Arisa)

 水谷 天音 (MIZUTANI Amane)

 森田 千遥 (MORITA Chiharu)

 西山 月花 (NISHIYAMA Tsukika)

 尾嶋 美京 (OJIMA Michika)

 武氏 涼花 (TAKEUJI Suzuka)

 竹安 美由香 (TAKEYASU Miyuka)

 渡邉 優 (WATANABE Yu)

 山角 真唯 (YAMAKADO Mai)

 湯澤 杏 (YUZAWA An)

論文掲載・化粧や衣服の類似性が対人魅力に及ぼす影響

「容装心理学研究」誌に、原著論文「化粧や衣服の類似性が対人魅力に及ぼす影響」が掲載されました。 本論文の研究 1 は、対人関係心理学研究室卒業生の森末理沙さんの 2013 年度 神戸女学院大学 人間科学部 心理・行動科学科 卒業論文を、研究2は藤井菜穂さんの2017年度同卒業論文を再分析・考察してまとめなおしたものです。多くの方にご覧いただけたらと思います。

木村昌紀・森末理沙・藤井菜穂 (2023).  化粧や衣服の類似性が対人魅力に及ぼす影響 容装心理学研究, 2, 32-43.

【要旨】 類似性魅力は, 対人魅力に関する頑健な現象である。従来の研究は, 主に態度や パーソナリティの類似性に注目してきた。本研究は, 化粧や衣服の類似性が対人魅力に及ぼす影響を実験的に検討した。41名の女性大学生が研究1に参加して, 化粧の類似性が対人魅力を高めることが実験的に示された。研究2では47名の女性大学生が参加し, 衣服の類似性が対人魅力を高めるが, 同じ衣服は似た衣服より魅力を低めることが実験的に示された。一連の結果から, 化粧や衣服の類似性が初対面の人物の魅力を高め, 関係形成を促進することが示唆された。ただし, 同じ衣服は独自性欲求の充足を妨げるため, 類似性魅力理論の予測に反して対人魅力を低める可能性がある。最後に, 本研究の限界と今後の展開について議論した。

13名の研究室メンバーの卒業

2023年3月17日(金)、13名の研究室メンバーが卒業しました。これからの健康と活躍を願っています。

本田 千陽 (HONDA Chiharu)「他者への援助要請が先延ばし行動の抑制に及ぼす影響」

桂 里奈  (KATSURA Rina)「化粧の種類が説得力に及ぼす影響」

栗山 真穂 (KURIYAMA Maho)「コロナ禍の外出自粛期間中にSNS上で形成された新たな友人関係の展開に関する検討」

松田 栞奈 (MATSUDA Kanna)「SNS上での匿名性と交流歴が開示程度に及ぼす影響」

永井 美那 (NAGAI Mina)「親子関係と社会経済的地位が青年期の子どもの結婚願望に及ぼす影響」

西尾 京香 (NISHIO Kyoka)「協力時におけるメンバー間のグリットの落差が怒り感情や攻撃行動に及ぼす影響」

奥平 清香 (OKUDAIRA Sayaka)「目の大きさと上瞼形状が外見的・内面的魅力に及ぼす影響」

竹橋 優葵美(TAKEHASHI Yukimi)「阪神タイガースのホームアドバンテージにおける観客の有無の効果」

土谷 美結花(TSUCHIYA Miyuka)「高い敏感さを持つ者はSNS利用時にストレスを感じやすいか」

上村 茉優 (UEMURA Mayu)「映像通報システムが緊急時のコミュニケーションに与える影響」

渡邊 瑞穂 (WATANABE Mizuho)「友人との共食がおいしさに与える影響」

山藤 未来 (YAMAFUJI Miki)「コロナ禍におけるマスクの色や形が対人魅力に及ぼす影響」

高橋 梨丘 (TAKAHASHI Riku)「同性愛を扱った創作物に触れる頻度と同性愛への態度との関連性」

第5回通信指令シンポジウム・研究発表

2023年2月4日(土)、帝京平成大学 池袋キャンパスで開催された第5回通信シンポジウムで発表を行いました。大学生と社会人を対象にして、映像通報システムを用いた119番通報の効果を主に迅速性と正確性の観点から実験的に検討した研究です。西宮市消防局の全面的な協力を得て、模擬緊急状況におい研究参加者からの模擬通報を、現役の通信指令員の皆様が受信し、対応いただきました。本研究室の上村さん、西宮市消防局の西岡明人氏、梅花女子大学の塩谷尚正先生、京都橘大学の北小屋裕先生との共同研究で、文部科学省科学研究費補助金「市民と通信指令員による緊急事態のコミュニケーションの実験社会心理学的研究」の助成を受けて行われました。本発表は、シンポジウム参加者に現在オンデマンド配信中で、6月末まで公開予定となっています。

木村昌紀・上村茉優・西岡明人・塩谷尚正・北小屋 裕 (2023). 映像通報システムを用いた119番通報の効果に関する世代間比較実験 第5回通信指令シンポジウム「感染症が日常化した時代の通信指令-通信指令のプロフェッショナリティ-」 於: 帝京平成大学 (2/4/2023).

神奈川県消防学校・通信指令員研修の講師担当

2023年2月10日(金)、神奈川県消防学校からご依頼をいただき、研修講師を担当しました。神奈川県下14消防本部消防職員の通信指令員の方26名を対象に、令和4年度 神奈川県消防学校 消防職員特別教育 通信指令員研修の講師を担当しました。昨年度に続き、「通信指令業務教育における心理学の導入」をテーマに、コミュニケーションの心理学や緊急時の心理、119番通報の際の市民と通信指令員による緊急時のコミュニケーション、などについて、これまでの研究成果や活動を踏まえて講義を行いました。最後に、貴重なご質問やご意見を多数いただきました。今後の研究・教育活動に活かして参りたいと考えています。

西宮市消防局との連携による「映像通報システムを用いた119番通報」の実験実施

 西宮市消防局のご協力をいただき、映像通報システムを用いた119番通報の実験を2022年6月~11月にかけて実施しました。
 従来の119番通報は、電話の先が見えず、音声のみを手がかりにしていました。映像通報システムは、現場の傷病者や災害状況をリアルタイムで通信指令室と共有することができ、現在全国各地で119番通報に導入されつつあります。
 今回、対人関係心理学研究室の上村さんとともに、この映像通報システムを用いた119番通報の効果を検証するため、模擬通報状況を設定して実験を行いました。大学内の実験室から模擬通報を行い、西宮市消防局 警防部指令課の通信指令センターで通信指令員が実際に受信し、対応いただきました。本研究の実施に際して、西岡明人氏を中心に西宮市消防局の全面的なご協力をいただきました。また、模擬通報者役の実験参加者として、学生や社会人、多くの皆様にご協力いただきました。
 昨年6月下旬から実験を開始し、新型コロナウイルス感染拡大下では消防業務を優先するため、一時中断を経て、10月から再開し、11月末に全ての実験を完了することができました。実験の準備から実施に至るまで、ご協力いただいた学内外の多くの皆様にあらためて御礼申し上げます。
 ご協力いただいた通信指令員の皆様からは、「今回の実験で映像通報システムの使用に磨きがかかった」「今後さらに映像通報システムを活用していく上での課題点を知ることができた」などのご意見をいただいています。また、実験に参加いただいた皆様からは、「模擬通報だとわかっていても緊張や焦りでうまく話せなかった」「実際の通報ではなおさら難しいと思う」「いざという時のために、119番通報や消防のことをもっと知り、備えておく必要があると思う」「とても良い経験になった」「映像通報システムを初めて知った」「うまく言葉にできないことも映像通報システムを通して伝達可能で、とても便利だと思った」「これまでスマートフォンを使いこなせていなかったが、映像通報システムを活用するため、操作に慣れるようにしたい」「電話の対応をしてくれた方(通信指令員)がとても冷静に、丁寧に対応してくださったので助かりました」など感想をいただきました。
 実験結果について、2023年1月に西宮市消防局で報告をさせていただきました。今後、全国の消防・救急医療関係者が参加する通信指令シンポジウムで本研究結果を発表する予定です。このシンポジウムは対面とオンラインでハイブリッド開催されますが、今回の研究発表は2月4日(土)~6月末まで参加者にオンデマンド配信される予定です。
 今回の研究結果が円滑な119番通報や映像通報システムの活用のために何か少しでも役に立つことを願っています。そのために、現時点の結果をシンポジウムで共有しつつ、さらにデータの解析や考察を進めていきたいと考えています。

論文掲載・中国人留学生を対象とする日本の文化的特徴を反映した社会的スキル・トレーニングの効果性検証

神戸学院大学の毛 新華先生との共著論文が神戸学院大学 心理学研究誌に掲載されました。毛先生がこれまで取り組まれてきた中国人を対象とする社会的スキル・トレーニングの知見をベースにして、日本に留学している中国人留学生を対象に日本文化の特徴を反映した社会的スキル・トレーニングを行うことで文化適応の促進を目指した研究で、今回はこのトレーニングの効果検証を行いました。

毛 新華・木村昌紀 (2022). 中国人留学生を対象とした日本文化的社会的スキル・トレーニングの効果性   神戸学院大学 心理学研究, 5, 39-52.

【要旨】
本研究の目的は,留学生に日本文化的スキルを身につけてもらうSSTプログラムを作成すること,そして,プログラムの中国人留学生に対する即時的向上効果および持続効果を検証することである。先行研究を参考に,文化共通のスキルと日本文化的スキルのそれぞれをトレーニングできるプログラムを作成した。中国人留学生22名を実験群とし,作成されたプログラムを実施した。また,別に収集した中国人留学生252名の社会的スキル尺度のデータを用いて,比較群とした。実験群内における測定時期の比較,そして,実験群の各測定時期と比較群のそれとの比較という2種類の分析を行った結果,中国文化的スキル尺度の得点に変化が見られず,文化共通のスキルと日本文化的スキル尺度の一部に得点の向上がみられた。しかし,3ヵ月後の持続効果はごく一部の尺度に限定されていた。これらの結果を踏まえ,本研究で作成したプログラムの有効性を確認できた。今後,中国人留学生への普及が期待される。

兵庫県広域防災センター・兵庫県消防学校での幹部教育研修

2022年12月20日(火)兵庫県広域防災センター・兵庫県消防学校からご依頼いただき、幹部候補職員の方を対象に研修を行い、講師を担当しました。
兵庫県下19消防本部から25名、滋賀県・京都府下の5消防本部から6名の幹部候補職員の皆様にご参加いただきました。

「現場活動・緊急事態の心理学」をテーマに、(1)災害現場の特徴とその心理、(2)いかにリスクと向き合うか(リスクテイキング)、(3)いかに失敗を想定するか(ヒューマンエラー)、(4)緊急事態対応の初動:119番通報について、心理学の観点から、これまでの研究・教育活動の取り組みを踏まえて解説しました。グループにわかれてディスカッションを行っていただき、参加いただいた幹部候補職員の方からは多くのご意見・ご質問をいただきました。

これから兵庫県や滋賀県、京都府の各消防本部において、参加いただいた皆様がリーダーシップを発揮される中で、難しい状況が多いとは存じますが、今回のお話が何か少しでも役立つこと、円滑・安全な職務遂行につながることを願っております。