「研究活動」カテゴリーアーカイブ

第5回通信指令シンポジウム・研究発表

2023年2月4日(土)、帝京平成大学 池袋キャンパスで開催された第5回通信シンポジウムで発表を行いました。大学生と社会人を対象にして、映像通報システムを用いた119番通報の効果を主に迅速性と正確性の観点から実験的に検討した研究です。西宮市消防局の全面的な協力を得て、模擬緊急状況におい研究参加者からの模擬通報を、現役の通信指令員の皆様が受信し、対応いただきました。本研究室の上村さん、西宮市消防局の西岡明人氏、梅花女子大学の塩谷尚正先生、京都橘大学の北小屋裕先生との共同研究で、文部科学省科学研究費補助金「市民と通信指令員による緊急事態のコミュニケーションの実験社会心理学的研究」の助成を受けて行われました。本発表は、シンポジウム参加者に現在オンデマンド配信中で、6月末まで公開予定となっています。

木村昌紀・上村茉優・西岡明人・塩谷尚正・北小屋 裕 (2023). 映像通報システムを用いた119番通報の効果に関する世代間比較実験 第5回通信指令シンポジウム「感染症が日常化した時代の通信指令-通信指令のプロフェッショナリティ-」 於: 帝京平成大学 (2/4/2023).

神奈川県消防学校・通信指令員研修の講師担当

2023年2月10日(金)、神奈川県消防学校からご依頼をいただき、研修講師を担当しました。神奈川県下14消防本部消防職員の通信指令員の方26名を対象に、令和4年度 神奈川県消防学校 消防職員特別教育 通信指令員研修の講師を担当しました。昨年度に続き、「通信指令業務教育における心理学の導入」をテーマに、コミュニケーションの心理学や緊急時の心理、119番通報の際の市民と通信指令員による緊急時のコミュニケーション、などについて、これまでの研究成果や活動を踏まえて講義を行いました。最後に、貴重なご質問やご意見を多数いただきました。今後の研究・教育活動に活かして参りたいと考えています。

西宮市消防局との連携による「映像通報システムを用いた119番通報」の実験実施

 西宮市消防局のご協力をいただき、映像通報システムを用いた119番通報の実験を2022年6月~11月にかけて実施しました。
 従来の119番通報は、電話の先が見えず、音声のみを手がかりにしていました。映像通報システムは、現場の傷病者や災害状況をリアルタイムで通信指令室と共有することができ、現在全国各地で119番通報に導入されつつあります。
 今回、対人関係心理学研究室の上村さんとともに、この映像通報システムを用いた119番通報の効果を検証するため、模擬通報状況を設定して実験を行いました。大学内の実験室から模擬通報を行い、西宮市消防局 警防部指令課の通信指令センターで通信指令員が実際に受信し、対応いただきました。本研究の実施に際して、西岡明人氏を中心に西宮市消防局の全面的なご協力をいただきました。また、模擬通報者役の実験参加者として、学生や社会人、多くの皆様にご協力いただきました。
 昨年6月下旬から実験を開始し、新型コロナウイルス感染拡大下では消防業務を優先するため、一時中断を経て、10月から再開し、11月末に全ての実験を完了することができました。実験の準備から実施に至るまで、ご協力いただいた学内外の多くの皆様にあらためて御礼申し上げます。
 ご協力いただいた通信指令員の皆様からは、「今回の実験で映像通報システムの使用に磨きがかかった」「今後さらに映像通報システムを活用していく上での課題点を知ることができた」などのご意見をいただいています。また、実験に参加いただいた皆様からは、「模擬通報だとわかっていても緊張や焦りでうまく話せなかった」「実際の通報ではなおさら難しいと思う」「いざという時のために、119番通報や消防のことをもっと知り、備えておく必要があると思う」「とても良い経験になった」「映像通報システムを初めて知った」「うまく言葉にできないことも映像通報システムを通して伝達可能で、とても便利だと思った」「これまでスマートフォンを使いこなせていなかったが、映像通報システムを活用するため、操作に慣れるようにしたい」「電話の対応をしてくれた方(通信指令員)がとても冷静に、丁寧に対応してくださったので助かりました」など感想をいただきました。
 実験結果について、2023年1月に西宮市消防局で報告をさせていただきました。今後、全国の消防・救急医療関係者が参加する通信指令シンポジウムで本研究結果を発表する予定です。このシンポジウムは対面とオンラインでハイブリッド開催されますが、今回の研究発表は2月4日(土)~6月末まで参加者にオンデマンド配信される予定です。
 今回の研究結果が円滑な119番通報や映像通報システムの活用のために何か少しでも役に立つことを願っています。そのために、現時点の結果をシンポジウムで共有しつつ、さらにデータの解析や考察を進めていきたいと考えています。

論文掲載・中国人留学生を対象とする日本の文化的特徴を反映した社会的スキル・トレーニングの効果性検証

神戸学院大学の毛 新華先生との共著論文が神戸学院大学 心理学研究誌に掲載されました。毛先生がこれまで取り組まれてきた中国人を対象とする社会的スキル・トレーニングの知見をベースにして、日本に留学している中国人留学生を対象に日本文化の特徴を反映した社会的スキル・トレーニングを行うことで文化適応の促進を目指した研究で、今回はこのトレーニングの効果検証を行いました。

毛 新華・木村昌紀 (2022). 中国人留学生を対象とした日本文化的社会的スキル・トレーニングの効果性   神戸学院大学 心理学研究, 5, 39-52.

【要旨】
本研究の目的は,留学生に日本文化的スキルを身につけてもらうSSTプログラムを作成すること,そして,プログラムの中国人留学生に対する即時的向上効果および持続効果を検証することである。先行研究を参考に,文化共通のスキルと日本文化的スキルのそれぞれをトレーニングできるプログラムを作成した。中国人留学生22名を実験群とし,作成されたプログラムを実施した。また,別に収集した中国人留学生252名の社会的スキル尺度のデータを用いて,比較群とした。実験群内における測定時期の比較,そして,実験群の各測定時期と比較群のそれとの比較という2種類の分析を行った結果,中国文化的スキル尺度の得点に変化が見られず,文化共通のスキルと日本文化的スキル尺度の一部に得点の向上がみられた。しかし,3ヵ月後の持続効果はごく一部の尺度に限定されていた。これらの結果を踏まえ,本研究で作成したプログラムの有効性を確認できた。今後,中国人留学生への普及が期待される。

兵庫県広域防災センター・兵庫県消防学校での幹部教育研修

2022年12月20日(火)兵庫県広域防災センター・兵庫県消防学校からご依頼いただき、幹部候補職員の方を対象に研修を行い、講師を担当しました。
兵庫県下19消防本部から25名、滋賀県・京都府下の5消防本部から6名の幹部候補職員の皆様にご参加いただきました。

「現場活動・緊急事態の心理学」をテーマに、(1)災害現場の特徴とその心理、(2)いかにリスクと向き合うか(リスクテイキング)、(3)いかに失敗を想定するか(ヒューマンエラー)、(4)緊急事態対応の初動:119番通報について、心理学の観点から、これまでの研究・教育活動の取り組みを踏まえて解説しました。グループにわかれてディスカッションを行っていただき、参加いただいた幹部候補職員の方からは多くのご意見・ご質問をいただきました。

これから兵庫県や滋賀県、京都府の各消防本部において、参加いただいた皆様がリーダーシップを発揮される中で、難しい状況が多いとは存じますが、今回のお話が何か少しでも役立つこと、円滑・安全な職務遂行につながることを願っております。

「119番の日」特別講義(神戸女学院大学)

11月9日は市民の防火・防災意識の高揚を図ることを目的に、消防庁によって「119番の日」と制定されています。2022年11月9日(金)、神戸市消防局警防部の米田里美様を本学にお招きし、緊急時に円滑に119番通報するための特別講義を1年生科目「クローバーゼミ」内で実施しました。

119番通報は消防活動や救急搬送、救助活動の初期対応であり、その迅速性や正確性が被害規模や人命を大きく左右します。しかし、市民が119番通報に関する正しい知識を十分に有していない懸念があり、正しい知識をもてば円滑な通報につながることが研究から示唆されています。

前半は木村が119番通報における市民と通信指令員による緊急事態のコミュニケーションを心理学の観点から解説しました。状況が見えない緊急時の電話連絡という手段の中で、聞き手と話し手が共通の基盤(コミュニケーションの前提となる知識や情報)を持つことが重要で、通報時の展開や聴取項目を予め把握していることでより円滑に情報を伝達できる可能性があります。
後半は、神戸市消防局の米田様による模擬通報体験を行いました。大学内で発生する事例動画を視聴し、119番に通報して通信指令員に救急を依頼するという内容です。

体験した学生からは「体験でも焦った」「マニュアルを見て練習してもドキドキしたのに実際に起こったらどうなるんだろう」等の感想があり、米田様からは通報時は落ち着いて、まずは救急車や消防車に来てほしい場所や住所を伝えることや、上手く話せなくても通信指令員が通報者に寄り添ってサポートしてくれるので躊躇わず通報することの重要さをご説明頂きました。

通報者にとって一生のうちに一度あるかないかの119番通報ですが、災害や急病など、いざその時に上手く助けを求めれるかどうかで救える命があります。今後起こり得るかもしれない自分や大切な人の命を守るため、119番通報の仕組みや正しい通報の仕方を知って備えることの大切さを学んだ貴重な機会となりました。

【PR動画】神戸市消防局「通信指令員の5RULES」
命を救うための119番通報。見えない電話の先で何が起きているのか。電話の先の命を救うために、通信指令員が取り組んでいる5つのルールを紹介するドキュメンタリー動画を神戸市消防局が作成されましたので是非ご覧ください 。

西宮市消防局・指令課研修

2022年10月17日(月)・18日(火)、西宮市消防局からご依頼をいただき、通信指令員の皆様を対象にして、研修を行いました。本学・神戸女学院大学も西宮市内にあります。この西宮市内で119番通報を行った際、受信して対応してくださるのが、この通信指令員の皆様です。今回、指令課口頭指導研修として「通信指令の心理学」というテーマで、119番通報を中心とした緊急事態におけるコミュニケーションを心理学の観点から解説し、通報者の方とやりとりする際に注意すべき点などをお話させていただきました。西宮市消防局では、西宮市民の皆様に119番通報について知っていただくためのPR動画(人命救助119を発信せよ)も作成されています。緊急時に備えて、西宮に住む多くの方に動画をご覧いただけたらと思います。今回の研修が、いざという時の119番通報で、西宮市民の皆様と通信指令員による円滑なコミュニケーションに少しでもつながればと願っています。

いばらき消防指令センター・講演会

2022年9月27日(火)いばらき消防指令センターからご依頼をいただき、講演の講師を担当しました。いばらき消防指令センターは茨城県内20消防本部33市町の119番通報の受信、出動指令その他の消防指令業務を共同で行っておられます。今回、「119番通報の心理学-通報者と通信指令員の円滑なコミュニケーションに向けて-」というテーマで、いばらき消防指令センター、日立市消防本部、つくば市消防本部、ひたちなか・ 東海広域事務組合消防本部、稲敷広域消防本部の通信指令員の方、オンライン参加を含めておよそ50名を対象にしてお話をさせていただきました。理論的な枠組みとしてコミュニケーションの心理学の全般的なお話から、緊急事態における人々の心理、119番通報における通報者の心理、通信指令員の職務技能とその心理的影響、119番通報者と通信指令員のコミュニケーションなどについてお話しました。通信指令員の皆さまから、多くのご質問やご意見をいただきました。今後の研究・教育活動に活用させていただきたいと考えております。

木村昌紀  (2022).  119番通報の心理学―通報者と通信指令員の円滑なコミュニケーションに向けて―  いばらき消防指令センター講演会 於: いばらき消防指令センター1階ホール  (9/27/2022).

日本社会心理学会第63回大会・研究発表

2022年9月15日(木)、京都橘大学で開催された日本社会心理学会第63回大会で口頭発表を行いました。本発表の研究1は森末理沙さん、研究2は藤井菜穂さんが神戸女学院大学 人間科学部 心理・行動科学科に提出した卒業論文を再分析し、まとめ直したものになります。

木村昌紀・森末 理沙・藤井 菜穂 (2022). 化粧や衣服の類似性が対人魅力に及ぼす影響 日本社会心理学会第63回大会発表論文集, p.65. 於: 京都橘大学 (9/14-9/15/2022).

秋田県・通信指令員教育研修会

秋田県総務部総合防災課からご依頼をいただき、2022年8月25日(木)秋田県庁第2庁舎にて令和4年度 通信指令員教育研修会の講師を担当しました。秋田県下の消防職員のうち、通信指令員の方を対象にして「通信指令コミュニケーションスキル」というタイトルでお話をさせていただきました。コミュニケーションの心理学の全般的なお話から、緊急時の心理、119番通報における通報者と通信指令員の心理やコミュニケーションについてお話しました。参加いただいた通信指令員の皆さまに大変熱心に受講いただき、ご質問やご意見をいただきました。