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コミュニケーションと対人関係の心理学を研究しています。

奈良市・生駒市合同の通信指令指令研修

2025年6月25日(水)、奈良市消防局で奈良市と生駒市合同の通信指令研修の講師を担当しました。

「通信指令の対人関係心理学ー映像通報システムの活用に向けてー」と題して、奈良市と生駒市の消防職員の方34名を対象に研修を行いました。私たちが119番通報をかけた際、電話で対応してくださるのが通信指令業務に従事している消防職員の方です。研修では、119番通報に関する心理学の考え方や知見を紹介しました。特に、奈良市・生駒市消防指令センターでは4月から映像通報システム(Live119)の実証実験を開始されており、関連する研究結果を紹介し、解説しました。

参加いただいた消防職員の皆さんからは「実務に沿った内容で理解しやすかった」「通報者の心理など興味深く聴きました」「今まで以上に通報者の気持ちを理解し、迅速に、正しい情報を聴取するという意識と使命感が湧いてきました」など感想をいただきました。

今回の研修が奈良市や生駒市の緊急時のコミュニケーションの円滑化に少しでもつながればと思います。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

論文公刊「119番通報の社会心理学」

「行動科学」誌に総説論文「119番通報の社会心理学ー市民と通信指令員による緊急事態のコミュニケーションー」が掲載されました。現代社会における119番通報の困難さや、通報者の心理、通信指令員の心理、119番通報の社会的ジレンマ、通報抑制の心理を解説した論文になっています。

木村昌紀 (2025). 119番通報の社会心理学ー市民と通信指令員による緊急事態のコミュニケーションー 行動科学, 63, 93-102.

論文公刊「なぜ緊急時の援助要請を控えるのか」

ヒューマンサイエンス誌に「なぜ緊急時の援助要請を控えるのかー119番通報抑制の実態とその規定因の検討ー」が掲載されました。近年、119番通報が増加傾向にありますが、抑制された通報の実態はよくわかっていません。本研究では、119番通報抑制の実態とその心理的な規定因をオンライン調査によって検討しました。

木村昌紀・塩谷尚正・北小屋裕 (2025). なぜ緊急時の援助要請を控えるのか―119番通報抑制の実態と規定因の検討― ヒューマンサイエンス, 28, 1-9.

【要約】本研究の目的は、119番通報抑制の実態とその規定因を心理学的に検討することである。全国の20代から60代の男女1176名を対象にオンライン調査を実施した。回答者全体の約15%が通報抑制を経験しており、抑制された通報のうち約30%が結果的に必要だった。男性より女性の方が、年長者より若者の方が通報をためらいやすく、相互協調性が通報を抑制する一方、相互独立性が通報を促進していた。援助要請回避型の特徴をもつ人たちほど119番通報も控えやすかった。119番通報の適正利用を求める公的な周知は、必要な緊急通報も抑制してしまう危険性があった。そのため、周知方法には十分な注意を払うべきである。

新メンバー10名の研究室配属

2025年度から新メンバー10名が本研究室に加わりました。これから一緒に楽しく学び、面白い研究ができたらと思います。

  • 有村 佳恵 (ARIMURA Yoshie)
  • 福本 七海 (FUKUMOTO Nanami)
  • 中西 桃香 (NAKANISHI Momoka)
  • 西村 泉美 (NISHIMURA Izumi)
  • 西尾 こなつ (NISHIO Konatsu)
  • 太田 さくら (OTA Sakura)
  • 住友 優花 (SUMITOMO Yuka)
  • 上田 紗綾 (UEDA Saya)
  • 宇佐見 啓子 (USAMI Keiko)
  • 山本 和香奈 (YAMAMOTO Wakana)

13名の研究室メンバーの卒業

2025年3月18日(火)13名の研究室メンバーが卒業しました。ユニークな卒業研究に意欲的に取り組んでくれました。それぞれの新天地での活躍と健康を心から願っています。

  • 阿蘓 遥香 (ASO Haruka) 援助要請スタイルによる援助者の切り替え方略使用とその有効性
  • 市川 優月 (ICHIKAWA Yuzuki) 推し活の方法が幸福感に及ぼす影響―推しのジャンルの違いによる検討―
  • 烏谷 亜莉沙 (KARASUDANI Arisa) スキンシップによって良好な恋愛関係は持続するのか
  • 水谷 天音 (MIZUTANI Amane) 接客場面における顧客の怒りの制御方略の有効性の検討
  • 西山 月花 (NISHIYAMA Tsukika) 上位者が下位者の意見を傾聴することでチーム・パフォーマンスは向上するのか
  • 尾嶋 美京 (OJIMA Michika) 公的自意識および好奇心がインスタグラム閲覧行動に及ぼす影響
  • 武氏 涼花 (TAKEUJI Suzuka) あいづちの種類がアイデアの量および質に及ぼす影響
  • 竹安 美由香 (TAKEYASU Miyuka) 送り手の顔文字の使用頻度と顔文字付きのメールが依頼効果に及ぼす影響
  • 渡邉 優 (WATANABE Yu) 対立の原因と異なる共通点が集団間葛藤に与える影響
  • 山角 真唯 (YAMAKADO Mai) 推し活においてお金を使うことは幸せか?
  • 湯澤 杏 (YUZAWA An) 災害対策時における身近な他者への思いやりが防災行動に及ぼす影響―パーソナリティとしての思いやりを考慮して―
  • 片山 林香 (KATAYAMA Rinka) 中国在留邦人の異文化間コミュニケーション特徴の検討
  • 森 真央 (MORI Mao) VR空間における手の外観が身体化感覚に与える影響

神奈川県消防学校・通信指令員研修

2025年2月6日(木)、神奈川県消防学校からご依頼をいただき、通信指令員の皆さんを対象に、研修講師を担当しました。消防の通信指令員は、急病やケガ、災害などで私たちが119番通報をした際、それを受信して、聴取や応急手当の助言、必要に応じて消防隊や救急隊の出動指令を行ってくださいます。
神奈川県では、音声による119番通報が困難な方が円滑に消防への通報を行える「Net119」や、急な病気やケガで救急車を呼ぶべきか、いますぐ病院に行くべきか迷った際に電話でアドバイスを受けられる「救急相談センター(#7119)」を県内全域で導入されています。また、横浜市、川崎市、横須賀市・葉山町指令センター、藤沢市、小田原市、伊勢原市、秦野市、大和市、箱根町の通信指令室では、動画の送受信が可能な「Live119」(映像通報システム)が導入されており、他の地域でも導入予定であったり、導入の検討がされています。
神奈川県消防学校では、2022年から通信指令員を対象にした特別教育を実施されています。今回が第4期になり、神奈川県下16消防本部・消防局の通信指令員の方25名が参加されました。この通信指令員研修は、通信指令員としての心構えや事例研究、図上訓練やシミュレーションなど多岐に渡る充実した内容になっています。
本研修では「通信指令業務教育における心理学の導入」をテーマに、コミュニケーションの心理学や緊急時の心理、119番通報の心理学などについてお話し、最新の映像通報システム(Live119)を用いた模擬通報実験や、映像通報システムや♯7119に関する調査結果を踏まえて講義を行いました。参加者の通信指令員の皆様には熱心に受講いただき、最後に意見交換を行いました。

論文早期公開「即時的対人感情制御」

神戸学院大学の山本恭子先生との共著論文が「心理学研究」誌で早期公開されました。対人コミュニケーションの中で他者の感情を制御する際の方略(即時的対人感情制御方略)や非言語行動との関連性を調べた研究です。科学研究費補助金(課題番号21K02972, 代表: 山本恭子)の助成を受けて行われました。

山本恭子・木村昌紀 (2025). 今ここで他者の感情をいかに制御するのか?―即時的対人感情制御方略と非言語行動― 心理学研究, 96.

寄稿・特集「通信指令の今」

近代消防社の消防防災専門情報誌「近代消防」2月号で、特集「通信指令の今」が組まれています。その中で、「通信指令業務への心理学的アプローチ」というテーマで寄稿させていただきました。対人コミュニケーションの心理学の基本的な考え方から、通報者の心理と通信指令員の心理などを解説しています。大切で、難しいコミュニケーション状況ですが、心理学の考え方が少しでも通報者と通信指令員の緊急時の通信に役立てばと思います。フィルタス株式会社の北小屋 裕先生の「兼務指令員が多数を占めている消防本部での教育」をテーマにした寄稿もあり、国内の様々な消防本部でいかに通信指令業務を運営していけばいいかのヒントが盛り込まれています。

木村昌紀 (2025). 通信指令業務への心理学的アプローチ ー特集 通信指令の今ー 近代消防, 63, 2, 30-35, 近代消防社.

滋賀県消防学校・通信指令特別教育

私たちが119番通報した際に、それを受信する大切な役割が消防機関の通信指令員です。滋賀県消防学校では、このたび通信指令のための特別教育を実施されました。2024年12月23日(月)、木村は心理学の観点から講義を行いました。119番通報における通報者の心理や、通信指令員の心理、緊急事態のコミュニケーションについて、これまでの調査や実験の結果を踏まえて、解説しました。当該教育には、滋賀県内各消防本部の消防職員の方々が入校し、熱心に講義を受講され、最後に意見交換を行いました。教育生の皆さんは現在、学んだことを通信指令業務に活用され、県民の安心・安全確保に努めてくださっています。

兵庫県消防学校・通信指令研修

消防の通信指令員は、市民からの119番通報を受信して質問や応急手当の助言をしたり、救急隊や消防隊を出動させたりします。ここでの対応は、私たちの命を守り、災害などの被害を抑える上でとても大切です。この通信指令員を対象にした研修が、2024年12月9日(月)兵庫県消防学校で開催されました。研修には、兵庫県を中心に、京都府や和歌山県の消防職員の方が参加され、愛知県からも消防職員の方が視察に訪れていました。本研修では、心理学の観点から119番通報の通報者の心理や、通信指令員の心理を解説し、研究知見を紹介しました。受講者の皆さんは熱心に参加いただき、最後に意見交換を行いました。今の時期は、寒さや乾燥のため救急搬送や火災の件数が増える傾向があります。今回の研修が、そういった緊急通報での対応に少しでも役立つことを願っています。