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コミュニケーションと対人関係の心理学を研究しています。

高知県消防長会「通信指令研修」担当

 2023年11月22日(水)に高知県消防長会からご依頼いただき、高知市東消防署で心理学の講演を行いました。今回の研修は、高知市消防局から企画いただき、高知県消防長会主催で実現しました。高知県内15消防本部から、119番通報を受信する通信指令員の消防職員35名に参加いただきました。
 高知県では、高知市と土佐市が2023年11月9日(木)から通信指令センターの共同運用を開始されています。県全体でも、緊急時に住民の声を最初に聴いて対応する通信指令員の育成に注力されています。
 今回の研修は「通信指令の心理学」をテーマにして、「コミュニケーションの心理学」「緊急時の心理学」「通報者と通報指令員の心理学的研究」の3部構成で行いました。大変熱心に受講いただき、体験課題にも積極的に取り組んでいただきました。
 今回の研修会が、緊急事態において高知県内の通信指令員と住民の皆様との円滑なコミュニケーションにつながり、大切な命や財産が守られることを願っています。

【高知・土佐消防指令センター パンフレット抜粋】

兵庫県消防学校「通信指令科」

兵庫県広域防災センターからご依頼いただき、2023年11月8日(水)に兵庫県消防学校で心理学の講義を行いました。

兵庫県消防学校では通信指令員のための特別教育「通信指令科」を2019年、2021年に実施されており、今回で3度目の担当となります。「通信指令と心理学」というテーマで、コミュニケーションの心理学や緊急時の心理を解説し、通報者の心理調査や、通信指令員の心理調査、事前知識が通報に及ぼす影響の実験研究、映像通報システムの効果検証実験、映像通報システムや救急安心センター事業(♯7119)の認知度調査などの知見を紹介しました。研修会には、兵庫県下で通信指令員として勤務する消防職員の方を中心に、滋賀県・京都府・和歌山県下で通信指令員として勤務する消防職員の方も合わせて45名の方が参加されていました。大変熱心に受講いただき、体験課題などにも取り組んでいただきました。今回の講義が、火災や救急などの緊急時において、通信指令員と住民の皆様との円滑なコミュニケーションにつながることを願っています。

愛媛県消防長会「119番口頭指導技術研修会」講演

愛媛県消防長会からご依頼いただき、2023年11月6日(月)に松山市保健所・消防合同庁舎で心理学の講演を行いました。

愛媛県消防長会では、119番通報を受信する通信指令員が通報者の方から適切に聴取する技術、必要に応じて応急手当を指示する口頭指導の技術を高めることを目的に「119番通報口頭指導技術研修会」を開催されています。また、松山市消防局では今年度4月から映像通報システムを試験的に導入されており、119番通報の際に活用されています。はじめに、松山市消防局の通信指令員の方による映像通報システムを使用した聴取や口頭指導の技術発表がありました。

その後、「通信指令の心理学」というテーマで講演を行いました。コミュニケーションの心理学や、緊急時の心理を解説した後、119番通報に関するこれまでの調査や実験の知見を紹介しました。その中で、昨年度実施した映像通報システムの研究をお話しました。

研修会には、愛媛県内の消防本部で通信指令員として勤務する職員を中心に35名の消防職員が参加されていました。熱心に受講いただき、貴重なご意見やご質問をいただきました。今回の研修会が、愛媛県内の通信指令員と住民の皆様との円滑なコミュニケーションにつながること、映像通報システムの更なる活用につながることを願っています。

豊田市消防本部・研修

愛知県豊田市からご依頼をいただき、2023年10月16日(月)に豊田市消防本部で「119番通報における通報者と通信指令員の円滑なコミュニケーションに向けて」というテーマで研修講師を担当しました。研修には、豊田市消防本部で通信指令員・救急隊員として勤務する消防職員97名の皆様に対面及びオンラインで参加いただきました。大変熱心に受講いただき、貴重なご質問やご意見をいただきました。

研修後、豊田市消防本部の指令室や防災学習センターを見学させていただき、小中学生への応急手当普及のユニークな取組みも教えていただきました。今回の研修が、通信指令員・救急隊員の皆様と豊田市民の皆様との円滑なコミュニケーションにつながることを願っています。

青森県消防学校・通信指令員研修

2023年10月29日(日)、青森県消防学校からご依頼いただき、通信指令員の方を対象にした研修の講師を担当しました。通信指令員は、急病や火災などの緊急時に地域住民の方からの119番通報を受信し、質問や応急処置の助言を行い、救急隊や消防隊を出動させます。今回、青森県消防学校特別教育「災害対応力向上コース」において、「通信指令教育における心理学の導入」と題して、コミュニケーションの心理学、緊急事態の心理、119番通報の心理学的研究知見について、お話させていただきました。今回の研修は、弘前地区消防事務組合消防本部からの提案があり、青森県消防学校主催で実現しました。研修には、弘前消防本部や青森県内各消防本部で通信指令員として勤務される消防職員の方およそ60名にご参加いただき、大変熱心に受講いただきました。今回の研修が、災害や急病、怪我、救助など緊急時において、青森県下の通報者と通信指令員の皆さんとの円滑なコミュニケーションに何か少しでもお役に立つことを願っています。

日本心理学会第87回大会・研究発表

2023年9月15日(金)~17日(日)、神戸国際会議場・神戸国際展示場でハイブリッド開催される日本心理学会第87回大会で3件の研究発表を行います。

  • 9月15日(金)16:00-18:00
    • 志水勇之進・小川一美・木村昌紀・藤原 健・渡邊伸行 (2023). 解読スキルを測定する日本人用課題遂行型テストの作成 【1D-022-PC】
  • 9月16日(土) 9:00-11:00
    • 木村昌紀・上村茉優・西岡明人・塩谷尚正・北小屋 裕 (2023). 緊急通報でも「百聞は一見に如かず?」ー映像通報システムと通報者の世代が119番通報に及ぼす影響ー 【2A-009-PC】
    • 山本恭子・木村昌紀 (2023). 今ここで、他者の感情をいかに制御するのか?ー短期的相互作用における対人感情制御方略と非言語行動の検討- 【2A-075-PM】

日本社会心理学会第64回大会・研究発表

2023年9月7日(木)・8日(金)、上智大学で開催された日本社会社会心理学会第64回大会で2件の連名発表を行いました。

  • 小川一美・木村昌紀・藤原 健・平島太郎 (2023). 日本人用非言語的手がかりに関する知識テスト(TONCK-Ⅱ for J)の作成(2) ー社会心理学の知識および解読の正確さとの関連ー 日本社会心理学会第64回発表論文集, p.47.
  • 志水勇之進・小川一美・木村昌紀・藤原 健・渡邊伸行 (2023). 基本6表情における感情の表出強度と表情解読の正確さの関連 日本社会心理学会第64回発表論文集, p.164.

日本臨床救急医学会総会・学術集会での講演

2023年7月27日(木)~7月29日(土)、日本臨床救急医学会総会・学術集会が帝京大学板橋キャンパスで開催されます。その中で、29日(土)9:00-10:00に教育講演「緊急時に想いを伝えあう-救急活動コミュニケーションの心理学-」を担当させていただきます。

【概要】救急活動に伴うコミュニケーションは、傷病者の命を救うために極めて重要であると同時に困難さもある。その難しさの理由として、傷病者の容体が刻一刻と悪化しうる時間的切迫感、傷病者や家族の経験的乏しさや感情的動揺、会話に加えて状況評価や応急処置を救急隊員が同時並行で行う複数課題状況などが挙げられる。救急隊員による現場活動に至るまでにも、119番通報を受信した通信指令の段階から救急活動のコミュニケーションははじまっている。通信指令では、通信指令員と通報者が物理的に離れた場所で顔の見えない中、声で情報を伝えあう。近年では、リアルタイムで傷病者の動画を送信できる映像通報システムのようなツールも導入されつつある。本講演では、このような救急活動に伴うコミュニケーションを心理学の観点から解説する。はじめに、コミュニケーションの心理学の基本的枠組を紹介する。次に、緊急時の心理や行動の特徴を説明する。その上で、救急活動のコミュニケーションについて、これまでに実施した調査や実験から得られた知見を交えてお話する。

論文採択決定・事前知識が119番通報に及ぼす影響

「社会安全学研究」誌に論文採択が決定しました。119番通報要領の知識を有することが、119番通報の迅速性と正確性に及ぼす影響を、模擬通報場面を設定して実験的に検証した研究になります。梅花女子大学の塩谷尚正先生、京都橘大学(現・NPO法人 病院前救護と健康管理研究会)の北小屋 裕先生、大阪大学産業科学研究所の駒谷和範先生との共著論文になります。

塩谷尚正・木村昌紀・北小屋裕・駒谷和範 (印刷中). 119番通報要領の事前知識が迅速性と正確性におよぼす影響―模擬通報場面による実験的検討― 社会安全学研究.

【和文要約】

119番通報は迅速かつ正確な情報共有が求められるコミュニケーションである。そのコミュニケーションは通信指令員が主導し,通報者にとってほとんど経験がなく、時間的切迫感があり,感情的動揺が喚起されやすいといった特徴がある。迅速で正確な緊急通報を実現するために通報者の事前知識が有効になると考えられ,その心理学的検証が求められる。本研究は119番通報の要領の事前知識がコミュニケーションの迅速性や正確性におよぼす影響を実験室実験によって検証した。実験参加者は通報要領の知識を事前に得る実験群と統制群とに振り分けられ,けが人が発生する場面の動画を視聴し,現役の通信指令員が対応する模擬的な119番通報を行った。その結果,統制群よりも実験群において有意に通話時間が短くなった。一方で正確な情報の伝達得点では群間の差はなかった。さらに発話行動の分析では,ターン(話者交代)数や実験参加者の発話の文字数と自己反復数が統制群よりも実験群において少なかった。そのうえ,実験協力者の発話の文字数と自己反復数が統制群よりも実験群において少ない傾向となった。これらの結果から,通報者の事前知識が円滑なコミュニケーションを促進し,必要な情報を迅速に伝達できるようになると考えられる。最後に、事前知識が緊急通報におよぼす効果の重要性について議論された。