「研究活動」カテゴリーアーカイブ

神奈川県消防学校・通信指令員研修

2025年2月6日(木)、神奈川県消防学校からご依頼をいただき、通信指令員の皆さんを対象に、研修講師を担当しました。消防の通信指令員は、急病やケガ、災害などで私たちが119番通報をした際、それを受信して、聴取や応急手当の助言、必要に応じて消防隊や救急隊の出動指令を行ってくださいます。
神奈川県では、音声による119番通報が困難な方が円滑に消防への通報を行える「Net119」や、急な病気やケガで救急車を呼ぶべきか、いますぐ病院に行くべきか迷った際に電話でアドバイスを受けられる「救急相談センター(#7119)」を県内全域で導入されています。また、横浜市、川崎市、横須賀市・葉山町指令センター、藤沢市、小田原市、伊勢原市、秦野市、大和市、箱根町の通信指令室では、動画の送受信が可能な「Live119」(映像通報システム)が導入されており、他の地域でも導入予定であったり、導入の検討がされています。
神奈川県消防学校では、2022年から通信指令員を対象にした特別教育を実施されています。今回が第4期になり、神奈川県下16消防本部・消防局の通信指令員の方25名が参加されました。この通信指令員研修は、通信指令員としての心構えや事例研究、図上訓練やシミュレーションなど多岐に渡る充実した内容になっています。
本研修では「通信指令業務教育における心理学の導入」をテーマに、コミュニケーションの心理学や緊急時の心理、119番通報の心理学などについてお話し、最新の映像通報システム(Live119)を用いた模擬通報実験や、映像通報システムや♯7119に関する調査結果を踏まえて講義を行いました。参加者の通信指令員の皆様には熱心に受講いただき、最後に意見交換を行いました。

論文早期公開「即時的対人感情制御」

神戸学院大学の山本恭子先生との共著論文が「心理学研究」誌で早期公開されました。対人コミュニケーションの中で他者の感情を制御する際の方略(即時的対人感情制御方略)や非言語行動との関連性を調べた研究です。科学研究費補助金(課題番号21K02972, 代表: 山本恭子)の助成を受けて行われました。

山本恭子・木村昌紀 (2025). 今ここで他者の感情をいかに制御するのか?―即時的対人感情制御方略と非言語行動― 心理学研究, 96.

寄稿・特集「通信指令の今」

近代消防社の消防防災専門情報誌「近代消防」2月号で、特集「通信指令の今」が組まれています。その中で、「通信指令業務への心理学的アプローチ」というテーマで寄稿させていただきました。対人コミュニケーションの心理学の基本的な考え方から、通報者の心理と通信指令員の心理などを解説しています。大切で、難しいコミュニケーション状況ですが、心理学の考え方が少しでも通報者と通信指令員の緊急時の通信に役立てばと思います。フィルタス株式会社の北小屋 裕先生の「兼務指令員が多数を占めている消防本部での教育」をテーマにした寄稿もあり、国内の様々な消防本部でいかに通信指令業務を運営していけばいいかのヒントが盛り込まれています。

木村昌紀 (2025). 通信指令業務への心理学的アプローチ ー特集 通信指令の今ー 近代消防, 63, 2, 30-35, 近代消防社.

滋賀県消防学校・通信指令特別教育

私たちが119番通報した際に、それを受信する大切な役割が消防機関の通信指令員です。滋賀県消防学校では、このたび通信指令のための特別教育を実施されました。2024年12月23日(月)、木村は心理学の観点から講義を行いました。119番通報における通報者の心理や、通信指令員の心理、緊急事態のコミュニケーションについて、これまでの調査や実験の結果を踏まえて、解説しました。当該教育には、滋賀県内各消防本部の消防職員の方々が入校し、熱心に講義を受講され、最後に意見交換を行いました。教育生の皆さんは現在、学んだことを通信指令業務に活用され、県民の安心・安全確保に努めてくださっています。

兵庫県消防学校・通信指令研修

消防の通信指令員は、市民からの119番通報を受信して質問や応急手当の助言をしたり、救急隊や消防隊を出動させたりします。ここでの対応は、私たちの命を守り、災害などの被害を抑える上でとても大切です。この通信指令員を対象にした研修が、2024年12月9日(月)兵庫県消防学校で開催されました。研修には、兵庫県を中心に、京都府や和歌山県の消防職員の方が参加され、愛知県からも消防職員の方が視察に訪れていました。本研修では、心理学の観点から119番通報の通報者の心理や、通信指令員の心理を解説し、研究知見を紹介しました。受講者の皆さんは熱心に参加いただき、最後に意見交換を行いました。今の時期は、寒さや乾燥のため救急搬送や火災の件数が増える傾向があります。今回の研修が、そういった緊急通報での対応に少しでも役立つことを願っています。

学会発表・119番通報の抑制

木村昌紀・塩谷 尚正・北小屋 裕 (2024). なぜ緊急時の援助要請を控えるのか―119番通報抑制の実態と心理機序の検討― 日本社会心理学会第65回大会発表論文集, p.266. 於: 日本大学 (9/19-10/3/2024).

論文早期公開・オンライン相互作用と孤独感

Kohei Kambara, Akihiro Toya, Sumin Lee, Haruka Shimizu, Kazuaki Abe, Jun Shigematsu, Qingyuan Zhang, Natsuki Abe, Ryo Hayase, Nobuhito Abe, Ryusuke Nakai, Shuntaro Aoki, Kohei Asano, Ryosuke Asano, Makoto Fujimura, Ken’ichiro Fukui, Yoshihiro Fukumoto, Kaichiro Furutani, Koji Hasegawa, Hirofumi Hashimoto, Mikoto Hashimoto, Hiroki Hosogoshi, Hiroshi Ikeda, Toshiyuki Ishioka, Chiharu Ito, Suguru Iwano, Masafumi Kamada, Yoshihiro Kanai, Tomonori Karita, Yu Kasagi, Emiko S. Kashima, Juri Kato, Yousuke Kawachi, Jun-ichiro Kawahara, Masanori Kimura, Yugo Kira, Yuko Kiyonaga (Sakoda), Hiroshi Kohguchi, Asuka Komiya, Keita Masui, Akira Midorikawa, Nobuhiro Mifune, Akimine Mizukoshi, Kengo Nawata, Takashi Nishimura, Daisuke Nogiwa, Kenji Ogawa, Junko Okada, Aki Okamoto, Reiko Okamoto, Kyoko Sasaki, Kosuke Sato, Hiroshi Shimizu, Atsushi Sugimura, Yoko Sugitani, Hitomi Sugiura, Kyoko Sumioka, Bumpei Sunaguchi, Masataka Takebe, Hiroki C. Tanabe, Ayumi Tanaka, Masanori Tanaka, Junichi Taniguchi, Namiji Tokunaga, Ryozo Tomita, Yumiko Ueda, Tomomi Yamashita, Kazuho Yamaura, Masao Yogo, Kenji Yokotani, Ayano Yoshida, Hiroaki Yoshida, Katsue Yoshihara, Ayumi Yoshikawa, Kuniaki Yanagisawa, Ken’ichiro Nakashima (2024). Can online interactions reduce loneliness in young adults during university closures in Japan? The directed acyclic graphs approach. Asian Journal of Social Psychology, https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ajsp.12658

秋田県総合防災課・通信指令研修

秋田県主催、秋田県消防長会と秋田県メディカルコントロール協議会の後援で、令和6年度 通信指令・口頭指導研修会が秋田県庁の災害対策本部室で開催されました。これは119番通報を受信する通信指令員を対象に、円滑に対応するためのコミュニケーション能力や、必要に応じた応急手当を助言するための医学的知識などの習得やスキルアップを目指すものです。秋田県総合防災課からご依頼をいただき、2024年9月30日(月)に「通信指令コミュニケーションスキル」をテーマに心理学の講義を行いました。研修には、秋田県下13消防本部から通信指令を担当する職員の皆さまに参加いただきました。熱心に受講いただき、たくさんのご質問やご意見をいただくことができました。今回の研修が緊急時のコミュニケーションの円滑化につながることを願っています。

大阪府立消防学校・通信指令研修

2024年6月26日(水)、大阪府立消防学校からご依頼をいただき、119番通報を受信する通信指令員を対象に心理学の講義を行いました。大阪府立消防学校で2018年に初めて講師を担当して以来、今回で7回目の講義になります。「通信指令業務教育における心理学の導入」というテーマで、泉州南広域消防本部にご協力いただき、共同で研修を行いました。同消防本部 警防部 指令課の鈴木 剛氏に事例解説とグループワークを担当いただき、木村が心理学の観点から通信指令の講義を担当しました。研修には、大阪府下及び奈良県下で通信指令員として勤務する消防職員25名の皆様に受講いただきました。心理学のメカニズムについて体験的に学ぶ課題や班でのディスカッションも時折設けられ、活発な意見交換や質疑応答もあり、みなさん初めて知る内容に刺激を受けながら終始積極的に参加してくださいました。心理学の知識や考え方が緊急時のコミュニケーションの円滑化につながることを願っております。

論文早期公開「表情表出の強度が判断の正確さに及ぼす影響」

愛知淑徳大学の志水勇之進氏と小川一美先生、國立中正大學の藤原健先生、金沢工業大学の渡邊伸行先生との共著論文がJapanese Psychological Researchで早期公開となりました。表情表出の強度をモーフィングで操作して、感情判断の正確さに及ぼす影響を検討した研究になります。

Yunoshin Shimizu, Kazumi Ogawa, Masanori Kimura, Ken Fujiwara & Nobuyuki Watanabe (2024). The influence of emotional facial expression intensity on decoding accuracy: High intensity does not yield high accuracy. Japanese Psychological Research, https://doi.org/10.1111/jpr.12529.