「研究活動」カテゴリーアーカイブ

秋田県の通信指令・口頭指導研修会

秋田県主催、秋田県消防長会と秋田県メディカルコントロール協議会の後援で、令和5年度 通信指令・口頭指導研修会が秋田県庁の災害対策本部室で2024年1月23日(火)~25日(木)の3日間開催されました。この研修会は、119番通報を受信する通信指令員が救急要請に円滑に対応するためのコミュニケーション能力や、必要に応じた応急手当を助言するための専門的な医学的知識などの習得やスキルアップを目指すものです。秋田県では通信指令員の育成に早くから尽力されているとともに、住民に対する119番通報の周知活動もされています。例えば、秋田市消防本部では、火災や救急の場面で円滑に通報できるように市民を対象に119番通報のシミュレーション講座を行っています。

秋田県総務部総合防災課からご依頼いただき、2024年1月25日(木)に「通信指令コミュニケーションスキル」というタイトルで心理学の講義を担当しました。秋田県内で通信指令業務に関わる消防職員18名に参加いただきました。コミュニケーションの心理学の全般的なお話から、緊急時の心理、119番通報における通報者や通信指令員の心理、これまでの研究知見について解説しました。参加いただいた通信指令員の皆さまに大変熱心に受講いただきました。秋田県の住民と通信指令員の皆様が、緊急時に円滑にコミュニケーションを行い、被害を抑え、多くの命が救われることを願っています。

日本行動科学学会WCシンポジウム

2024年2月18日(日)に、日本行動科学学会第39回ウインターカンファレンス(WC)企画シンポジウム「日常と非日常をつなぐ社会心理学」で話題提供させていただきます。

「日常と非日常をつなぐ社会心理学」
2024年は年頭から能登半島地震,羽田空港の事故と大きな災害と事故が発生した。ここ数年を振り返っても,極端な気象と自然災害の頻発,COVID-19禍などを経験して,私たちは非常事態や緊急事態というものが身近にあることをあらためて実感する。それでもなお,そうした事態を非日常として切り離しておくことを望みがちである。いつか起こりうる望ましくない事態に目を向け,自分事とするためにはどうすればよいだろうか。
災害に遭遇すると,生活の再建に長期間を要する場合がある。その間の居住環境は,持ち家や復興住宅など多様にある。静間氏から,東日本大震災の被災地の市民を対象として,復興住宅における生活の実態や満足度に関する調査の結果を報告する。
災害や救急の際には,119番通報で消防機関に緊急援助要請を行う。119番通報は人命や被害規模を左右する,重要かつ困難なコミュニケーションである。木村氏からは,119番通報のコミュニケーションを対象としたこれまでの研究を紹介しながら,緊急時の円滑な通報のために何ができるかを提案する。
いつ起きるかもどの程度の被害になるかもわからないリスクを,人はどのように捉え,そして備えや対処をしているのか。塩谷(企画者)は,COVID-19や災害に対する対処行動やリスク認知に関する調査研究に基づいて,日常生活と切り離せないリスクとの付き合い方について検討する。以上の社会心理学的知見を手掛かりとして,本シンポジウムは日常と非日常をつなぐために会場の皆様と積極的に議論する場としたい。

企画・司会 塩谷尚正先生(梅花女子大学)

<話題提供>
復興住宅における生活実態と主観的評価
静間健人先生(東日本大震災・原子力災害伝承館)

市民と通信指令員による緊急事態のコミュニケーション:119番通報
木村昌紀(神戸女学院大学)

生活の中のリスクに対する認知と行動
塩谷尚正先生(梅花女子大学)

高知県消防長会「通信指令研修」担当

 2023年11月22日(水)に高知県消防長会からご依頼いただき、高知市東消防署で心理学の講演を行いました。今回の研修は、高知市消防局から企画いただき、高知県消防長会主催で実現しました。高知県内15消防本部から、119番通報を受信する通信指令員の消防職員35名に参加いただきました。
 高知県では、高知市と土佐市が2023年11月9日(木)から通信指令センターの共同運用を開始されています。県全体でも、緊急時に住民の声を最初に聴いて対応する通信指令員の育成に注力されています。
 今回の研修は「通信指令の心理学」をテーマにして、「コミュニケーションの心理学」「緊急時の心理学」「通報者と通報指令員の心理学的研究」の3部構成で行いました。大変熱心に受講いただき、体験課題にも積極的に取り組んでいただきました。
 今回の研修会が、緊急事態において高知県内の通信指令員と住民の皆様との円滑なコミュニケーションにつながり、大切な命や財産が守られることを願っています。

【高知・土佐消防指令センター パンフレット抜粋】

兵庫県消防学校「通信指令科」

兵庫県広域防災センターからご依頼いただき、2023年11月8日(水)に兵庫県消防学校で心理学の講義を行いました。

兵庫県消防学校では通信指令員のための特別教育「通信指令科」を2019年、2021年に実施されており、今回で3度目の担当となります。「通信指令と心理学」というテーマで、コミュニケーションの心理学や緊急時の心理を解説し、通報者の心理調査や、通信指令員の心理調査、事前知識が通報に及ぼす影響の実験研究、映像通報システムの効果検証実験、映像通報システムや救急安心センター事業(♯7119)の認知度調査などの知見を紹介しました。研修会には、兵庫県下で通信指令員として勤務する消防職員の方を中心に、滋賀県・京都府・和歌山県下で通信指令員として勤務する消防職員の方も合わせて45名の方が参加されていました。大変熱心に受講いただき、体験課題などにも取り組んでいただきました。今回の講義が、火災や救急などの緊急時において、通信指令員と住民の皆様との円滑なコミュニケーションにつながることを願っています。

愛媛県消防長会「119番口頭指導技術研修会」講演

愛媛県消防長会からご依頼いただき、2023年11月6日(月)に松山市保健所・消防合同庁舎で心理学の講演を行いました。

愛媛県消防長会では、119番通報を受信する通信指令員が通報者の方から適切に聴取する技術、必要に応じて応急手当を指示する口頭指導の技術を高めることを目的に「119番通報口頭指導技術研修会」を開催されています。また、松山市消防局では今年度4月から映像通報システムを試験的に導入されており、119番通報の際に活用されています。はじめに、松山市消防局の通信指令員の方による映像通報システムを使用した聴取や口頭指導の技術発表がありました。

その後、「通信指令の心理学」というテーマで講演を行いました。コミュニケーションの心理学や、緊急時の心理を解説した後、119番通報に関するこれまでの調査や実験の知見を紹介しました。その中で、昨年度実施した映像通報システムの研究をお話しました。

研修会には、愛媛県内の消防本部で通信指令員として勤務する職員を中心に35名の消防職員が参加されていました。熱心に受講いただき、貴重なご意見やご質問をいただきました。今回の研修会が、愛媛県内の通信指令員と住民の皆様との円滑なコミュニケーションにつながること、映像通報システムの更なる活用につながることを願っています。

豊田市消防本部・研修

愛知県豊田市からご依頼をいただき、2023年10月16日(月)に豊田市消防本部で「119番通報における通報者と通信指令員の円滑なコミュニケーションに向けて」というテーマで研修講師を担当しました。研修には、豊田市消防本部で通信指令員・救急隊員として勤務する消防職員97名の皆様に対面及びオンラインで参加いただきました。大変熱心に受講いただき、貴重なご質問やご意見をいただきました。

研修後、豊田市消防本部の指令室や防災学習センターを見学させていただき、小中学生への応急手当普及のユニークな取組みも教えていただきました。今回の研修が、通信指令員・救急隊員の皆様と豊田市民の皆様との円滑なコミュニケーションにつながることを願っています。

青森県消防学校・通信指令員研修

2023年10月29日(日)、青森県消防学校からご依頼いただき、通信指令員の方を対象にした研修の講師を担当しました。通信指令員は、急病や火災などの緊急時に地域住民の方からの119番通報を受信し、質問や応急処置の助言を行い、救急隊や消防隊を出動させます。今回、青森県消防学校特別教育「災害対応力向上コース」において、「通信指令教育における心理学の導入」と題して、コミュニケーションの心理学、緊急事態の心理、119番通報の心理学的研究知見について、お話させていただきました。今回の研修は、弘前地区消防事務組合消防本部からの提案があり、青森県消防学校主催で実現しました。研修には、弘前消防本部や青森県内各消防本部で通信指令員として勤務される消防職員の方およそ60名にご参加いただき、大変熱心に受講いただきました。今回の研修が、災害や急病、怪我、救助など緊急時において、青森県下の通報者と通信指令員の皆さんとの円滑なコミュニケーションに何か少しでもお役に立つことを願っています。

日本心理学会第87回大会・研究発表

2023年9月15日(金)~17日(日)、神戸国際会議場・神戸国際展示場でハイブリッド開催される日本心理学会第87回大会で3件の研究発表を行います。

  • 9月15日(金)16:00-18:00
    • 志水勇之進・小川一美・木村昌紀・藤原 健・渡邊伸行 (2023). 解読スキルを測定する日本人用課題遂行型テストの作成 【1D-022-PC】
  • 9月16日(土) 9:00-11:00
    • 木村昌紀・上村茉優・西岡明人・塩谷尚正・北小屋 裕 (2023). 緊急通報でも「百聞は一見に如かず?」ー映像通報システムと通報者の世代が119番通報に及ぼす影響ー 【2A-009-PC】
    • 山本恭子・木村昌紀 (2023). 今ここで、他者の感情をいかに制御するのか?ー短期的相互作用における対人感情制御方略と非言語行動の検討- 【2A-075-PM】

日本社会心理学会第64回大会・研究発表

2023年9月7日(木)・8日(金)、上智大学で開催された日本社会社会心理学会第64回大会で2件の連名発表を行いました。

  • 小川一美・木村昌紀・藤原 健・平島太郎 (2023). 日本人用非言語的手がかりに関する知識テスト(TONCK-Ⅱ for J)の作成(2) ー社会心理学の知識および解読の正確さとの関連ー 日本社会心理学会第64回発表論文集, p.47.
  • 志水勇之進・小川一美・木村昌紀・藤原 健・渡邊伸行 (2023). 基本6表情における感情の表出強度と表情解読の正確さの関連 日本社会心理学会第64回発表論文集, p.164.

日本臨床救急医学会総会・学術集会での講演

2023年7月27日(木)~7月29日(土)、日本臨床救急医学会総会・学術集会が帝京大学板橋キャンパスで開催されます。その中で、29日(土)9:00-10:00に教育講演「緊急時に想いを伝えあう-救急活動コミュニケーションの心理学-」を担当させていただきます。

【概要】救急活動に伴うコミュニケーションは、傷病者の命を救うために極めて重要であると同時に困難さもある。その難しさの理由として、傷病者の容体が刻一刻と悪化しうる時間的切迫感、傷病者や家族の経験的乏しさや感情的動揺、会話に加えて状況評価や応急処置を救急隊員が同時並行で行う複数課題状況などが挙げられる。救急隊員による現場活動に至るまでにも、119番通報を受信した通信指令の段階から救急活動のコミュニケーションははじまっている。通信指令では、通信指令員と通報者が物理的に離れた場所で顔の見えない中、声で情報を伝えあう。近年では、リアルタイムで傷病者の動画を送信できる映像通報システムのようなツールも導入されつつある。本講演では、このような救急活動に伴うコミュニケーションを心理学の観点から解説する。はじめに、コミュニケーションの心理学の基本的枠組を紹介する。次に、緊急時の心理や行動の特徴を説明する。その上で、救急活動のコミュニケーションについて、これまでに実施した調査や実験から得られた知見を交えてお話する。