「研究活動」カテゴリーアーカイブ

日本臨床救急医学会総会・学術集会での講演

2023年7月27日(木)~7月29日(土)、日本臨床救急医学会総会・学術集会が帝京大学板橋キャンパスで開催されます。その中で、29日(土)9:00-10:00に教育講演「緊急時に想いを伝えあう-救急活動コミュニケーションの心理学-」を担当させていただきます。

【概要】救急活動に伴うコミュニケーションは、傷病者の命を救うために極めて重要であると同時に困難さもある。その難しさの理由として、傷病者の容体が刻一刻と悪化しうる時間的切迫感、傷病者や家族の経験的乏しさや感情的動揺、会話に加えて状況評価や応急処置を救急隊員が同時並行で行う複数課題状況などが挙げられる。救急隊員による現場活動に至るまでにも、119番通報を受信した通信指令の段階から救急活動のコミュニケーションははじまっている。通信指令では、通信指令員と通報者が物理的に離れた場所で顔の見えない中、声で情報を伝えあう。近年では、リアルタイムで傷病者の動画を送信できる映像通報システムのようなツールも導入されつつある。本講演では、このような救急活動に伴うコミュニケーションを心理学の観点から解説する。はじめに、コミュニケーションの心理学の基本的枠組を紹介する。次に、緊急時の心理や行動の特徴を説明する。その上で、救急活動のコミュニケーションについて、これまでに実施した調査や実験から得られた知見を交えてお話する。

論文採択決定・事前知識が119番通報に及ぼす影響

「社会安全学研究」誌に論文採択が決定しました。119番通報要領の知識を有することが、119番通報の迅速性と正確性に及ぼす影響を、模擬通報場面を設定して実験的に検証した研究になります。梅花女子大学の塩谷尚正先生、京都橘大学(現・NPO法人 病院前救護と健康管理研究会)の北小屋 裕先生、大阪大学産業科学研究所の駒谷和範先生との共著論文になります。

塩谷尚正・木村昌紀・北小屋裕・駒谷和範 (印刷中). 119番通報要領の事前知識が迅速性と正確性におよぼす影響―模擬通報場面による実験的検討― 社会安全学研究.

【和文要約】

119番通報は迅速かつ正確な情報共有が求められるコミュニケーションである。そのコミュニケーションは通信指令員が主導し,通報者にとってほとんど経験がなく、時間的切迫感があり,感情的動揺が喚起されやすいといった特徴がある。迅速で正確な緊急通報を実現するために通報者の事前知識が有効になると考えられ,その心理学的検証が求められる。本研究は119番通報の要領の事前知識がコミュニケーションの迅速性や正確性におよぼす影響を実験室実験によって検証した。実験参加者は通報要領の知識を事前に得る実験群と統制群とに振り分けられ,けが人が発生する場面の動画を視聴し,現役の通信指令員が対応する模擬的な119番通報を行った。その結果,統制群よりも実験群において有意に通話時間が短くなった。一方で正確な情報の伝達得点では群間の差はなかった。さらに発話行動の分析では,ターン(話者交代)数や実験参加者の発話の文字数と自己反復数が統制群よりも実験群において少なかった。そのうえ,実験協力者の発話の文字数と自己反復数が統制群よりも実験群において少ない傾向となった。これらの結果から,通報者の事前知識が円滑なコミュニケーションを促進し,必要な情報を迅速に伝達できるようになると考えられる。最後に、事前知識が緊急通報におよぼす効果の重要性について議論された。

大阪府立消防学校「通信指令研修」講師担当

今年度も大阪府立消防学校からご依頼をいただき、2023年6月28日(水)に第166回特別教育・通信指令研修で講師を担当しました。通信指令研修のうち「通信指令業務教育における心理学の導入」というテーマで、泉州南広域消防本部にご協力いただき、研修を行いました。同消防本部 警防部 指令課の鈴木 剛氏に事例解説とグループワークを担当いただき、木村が心理学の観点から通信指令の講義を担当しました。研修には、大阪府下で通信指令員として勤務する消防職員31名の皆様に受講いただきました。今回の研修が、指令員の皆様と地域住民の皆様との円滑な通信につながることを願っています。

「<よそおい>の心理学」刊行

<よそおい>の心理学」(荒川 歩先生・鈴木公啓先生・木戸彩恵先生 編)が北大路書房から刊行されました。衣服や化粧など、よそおいの心理的機能に注目して執筆された本です。木村は「6章 自他の関係調整ツールとしてのよそおい」を担当しています。衣服や化粧のシグナリング機能や類似性魅力、双子コーデ・お揃いを取りあげ、関係調整ツールとしての衣服や化粧を解説しています。また、言語・非言語行動をよそおいと捉えた際に、それらも関係調整機能を有することを紹介しています。

木村昌紀 (2023). 自他の関係調整ツールとしてのよそおい 荒川歩・鈴木公啓・木戸彩恵(編著) <よそおい>の心理学―サバイブ技法としての身体装飾― 北大路書房. pp.105-119.

泉州地域メディカルコントロール協議会「救命講習会」・講師担当

大阪府医師会からご依頼をいただき、2023年5月15日(月)泉州南広域消防本部にて、泉州地域メディカルコントロール協議会「救命講習会」で講師を担当させていただきました。「緊急時のコミュニケーション心理学」というテーマで、コミュニケーションの心理学、緊急時の心理、救急隊員・通信指令員のコミュニケーションについて、これまでの研究知見を交え、お話させていただきました。岸和田市消防本部、和泉市消防本部、泉大津市消防本部、貝塚市消防本部、忠岡町消防本部、堺市消防局、泉州南消防組合から89名の消防職員の皆様にご参加いただき、質問やご意見をいただきました。今回のお話が何か少しでも今後の救急活動につながるヒントになればと思います。

夢ナビ講義Video「緊急時に想いを伝える: 119番通報の心理学」公開

夢ナビ講義Video「緊急時に想いを伝える: 119番通報の心理学」が公開されました。

【概要】  目に見えず・形のない心を伝えあうのがコミュニケーション。普段なら、大事なことは時間をかけて何度も伝えることができます。ところが、急病や災害時には限られた時間や手がかりで伝える必要があります。本講義では119番通報の心理学をテーマにお話します。

「コミュニケーションの社会心理学」刊行

「コミュニケーションの社会心理学」(岡本真一郎先生・編)がナカニシヤ出版から刊行されました。言語・非言語・メディアのコミュニケーションの基本的性質から、対人認知、説得、攻撃やネガティブ・フィードバック、噂、消費者行動、文化、SNSに至る現代社会における幅広いトピックをカバーしています。木村は非言語コミュニケーションのパートを担当しました。かつて盛んに研究され、学際性やテクノロジーの発展で今また注目が高まっている非言語について、非言語ならではの特徴や言語と組み合わさった働きなどを含め、紹介しています。多くの方に手に取ってお読みいただけたらと思います。

木村昌紀 (2023). 非言語が伝えること 岡本真一郎(編著) コミュニケーションの社会心理学―伝える・関わる・動かす― ナカニシヤ出版. pp.29-45.

論文掲載・化粧や衣服の類似性が対人魅力に及ぼす影響

「容装心理学研究」誌に、原著論文「化粧や衣服の類似性が対人魅力に及ぼす影響」が掲載されました。 本論文の研究 1 は、対人関係心理学研究室卒業生の森末理沙さんの 2013 年度 神戸女学院大学 人間科学部 心理・行動科学科 卒業論文を、研究2は藤井菜穂さんの2017年度同卒業論文を再分析・考察してまとめなおしたものです。多くの方にご覧いただけたらと思います。

木村昌紀・森末理沙・藤井菜穂 (2023).  化粧や衣服の類似性が対人魅力に及ぼす影響 容装心理学研究, 2, 32-43.

【要旨】 類似性魅力は, 対人魅力に関する頑健な現象である。従来の研究は, 主に態度や パーソナリティの類似性に注目してきた。本研究は, 化粧や衣服の類似性が対人魅力に及ぼす影響を実験的に検討した。41名の女性大学生が研究1に参加して, 化粧の類似性が対人魅力を高めることが実験的に示された。研究2では47名の女性大学生が参加し, 衣服の類似性が対人魅力を高めるが, 同じ衣服は似た衣服より魅力を低めることが実験的に示された。一連の結果から, 化粧や衣服の類似性が初対面の人物の魅力を高め, 関係形成を促進することが示唆された。ただし, 同じ衣服は独自性欲求の充足を妨げるため, 類似性魅力理論の予測に反して対人魅力を低める可能性がある。最後に, 本研究の限界と今後の展開について議論した。

13名の研究室メンバーの卒業

2023年3月17日(金)、13名の研究室メンバーが卒業しました。これからの健康と活躍を願っています。

本田 千陽 (HONDA Chiharu)「他者への援助要請が先延ばし行動の抑制に及ぼす影響」

桂 里奈  (KATSURA Rina)「化粧の種類が説得力に及ぼす影響」

栗山 真穂 (KURIYAMA Maho)「コロナ禍の外出自粛期間中にSNS上で形成された新たな友人関係の展開に関する検討」

松田 栞奈 (MATSUDA Kanna)「SNS上での匿名性と交流歴が開示程度に及ぼす影響」

永井 美那 (NAGAI Mina)「親子関係と社会経済的地位が青年期の子どもの結婚願望に及ぼす影響」

西尾 京香 (NISHIO Kyoka)「協力時におけるメンバー間のグリットの落差が怒り感情や攻撃行動に及ぼす影響」

奥平 清香 (OKUDAIRA Sayaka)「目の大きさと上瞼形状が外見的・内面的魅力に及ぼす影響」

竹橋 優葵美(TAKEHASHI Yukimi)「阪神タイガースのホームアドバンテージにおける観客の有無の効果」

土谷 美結花(TSUCHIYA Miyuka)「高い敏感さを持つ者はSNS利用時にストレスを感じやすいか」

上村 茉優 (UEMURA Mayu)「映像通報システムが緊急時のコミュニケーションに与える影響」

渡邊 瑞穂 (WATANABE Mizuho)「友人との共食がおいしさに与える影響」

山藤 未来 (YAMAFUJI Miki)「コロナ禍におけるマスクの色や形が対人魅力に及ぼす影響」

高橋 梨丘 (TAKAHASHI Riku)「同性愛を扱った創作物に触れる頻度と同性愛への態度との関連性」